３時間に1分足りない179分の長編映画【ドライブ・マイ・カー】
を観てきた。また纏められない病で長くなりそうです。すみません。
映画をご覧になった方でないと意味不明な感想になっています。あしからず。

原作は村上春樹の短編集「女のいない男たち」。

カンヌ国際映画祭 全4冠！映画『ドライブ・マイ・カー』90秒予告

2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品、
日本映画では初の脚本賞を受賞。
国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞した。

濱口竜介監督　

濱口 竜介 （はまぐち りゅうすけ、 1978年 12月16日 - ）は、 日本 の 映画監督 、 脚本家 である。 東京芸術大学 大学院映像研究科修了 。 1978年12月16日、 神奈川県 に生まれる 。 東京大学文学部 在学中は映画研究会に所属 。 卒業後、映画の 助監督 やテレビ番組の アシスタントディレクター を経て、2006年に東京芸術大学大学院映像研究科に入学する。

カンヌ映画祭　濱口監督作品が公式上映で大きな拍手(2021年7月12日)

　濱口竜介監督と言えばまことに申し訳ないのだが、前作『寝ても覚めても』(2018）の印象があまりに悪くて、というのは私が杏さんの大大大ファンでありますのであの主役二人の騒動には非常に腹を立てていて、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで、その映画も途中まで観ようとはしたのですがダメで、監督さんのお名前までも忘れかかっておりました。すみません。監督さんもそのラブアフェアの犠牲者でもありました。

　村上春樹の50ページほどの短編小説を179分の長編として蘇らせた脚本ってどんなだろう。

【Story】

　演出家で役者でもある☆家福悠介（西島秀俊） は妻で脚本家の☆家福音（霧島れいか）と東京都内のマンションで暮らしている。 悠介は舞台演劇、音はかつては女優で今はTVドラマの脚本家として活躍している。
　しかし二人の創作活動は独特で、夫婦のセックスはただ単に愛し合うだけではない。妻はセックスの最中、まるで何かが憑依したかのように物語を語りだす。悠介はそれを一言漏らさぬように記憶し、妻はすっかり忘れていたその話を聞き取り、それを元に脚本を書く。
　仕事でロシアへ向かうはずの飛行機が一日延び、成田から自宅に戻ると妻がが若い男優☆高槻（岡田将生）との情事の光景を目撃するが、そのまま何事もなかったように
成田のホテルに戻り、いかにもロシアにいるかのようにスカイプで笑顔で妻と会話する。
　そして数日後、出がけに妻は「今晩　帰ったら話できる？」といった。しかし悠介は、気が乗らず車で都内をドライブし、あえて遅く帰宅した。そこで見つけたのは息絶えた妻の姿。くも膜下出血だった。
　それから喪失感を抱えて２年が経った。チェーホフの舞台『ワーニャ伯父さん』を演出するため真っ赤な愛車（SAAB　900ターボ）で広島に向かう。
　そこで彼の専属ドライバーとして現れた☆渡利みさき(三浦透子)と出会う。彼女の高度な「運転」という行為を通して、ふたりの人間の魂は少しずつふれあいながら、それぞれの人生を語り始め、家福の心が少しずつ変化していくようだ。彼の愛車、旧型の真っ赤な「900ターボ」を静かに運転する寡黙で無愛想な女性に観客は車の中に引き込まれてしまう。

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【感想】

　原作は読んでいないのだが、妻の死因はクモ膜下でなく癌の末期という設定だという。愛車も真っ赤でなく黄色。若い俳優高槻も原作では40代で映画では若者。
突然死ではなかったならまたストーリーも違ったはずだから、もうこの時点で原作から離れて、濱口ワールドなのだろうか。
　車の中で亡き妻が残した「ワーニャ伯父さん」のテープをかけて家福はセリフを練習します。彼女はワーニャ以外の台詞を全く感情を入れずに言います。
　映画の中の多言語で話される「ワーニャ伯父さん」の台本の読み合わせシーンが延々と続きますが、ここでも「感情を込めてはいけない」という決まりがあるのです。「濱口メソッド」といわれる、独特な本読みだそうですがとても興味深かったです。お芝居をされている方には容易に理解できる方法なのでしょうか。

西島秀俊、岡田将生、濱口竜介監督が登場！映画『ドライブ・マイ・カー』初日舞台あいさつ【トークノーカット】

主演の西島秀俊さんは、
「ずっと本読みをしているので、全員の台詞が頭の中に完全に記憶されるんです。でも本番になったときに、相手が初めて感情を込めてその台詞を言うと、突然、目の前に生きている人がばーっと現れたような感じがして、毎シーン感動するんですよね。不思議な感覚です。もちろん相手は知っている人なんですけど、初めて見る面を見せつけられるような感じがして。何気なく見えるシーンでも、非常に演じている側は感動するという、初めての体験でした。個人的なキャリアとしては、全くいままでとは違う演技になっていたのかなと思います」
👆　ふむふむ　なるほどなるほどです。

👆濱口監督がこうした独特の演出法を確立したのが、2015年公開の「ハッピーアワー」という作品。今5時間という長丁場の映画を観ている途中なのですがドキュメンタリーのようなんですね。4人の主人公がその役柄その人に見えるんですね。とても自然なんです。主演を務めた女性たちは、演技が未経験にもかかわらず、その年のロカルノ国際映画祭で主演女優賞を受賞する快挙を成し遂げたそうです。
　監督が本読みに加えて実践したのが、緻密な背景設定を組み立てることで本編の台本とほぼ同じ長さの、本編には一切登場しないシーンを描いた、もう一つの台本を用意したのです。「サブテキスト」と名付けられ、登場人物たちの過去の出来事などのアナザーストーリーが書かれています。このサブテキストの台本は単に俳優たちに参考にしてもらうだけではなく、実際に稽古で演じてもらい、俳優たちは、それぞれの役の性格をより深く理解したうえで、撮影に臨むことができたそうです。

　監督は、こうした緻密な背景設定の構築を、演技経験が豊富な俳優たちが出演する「ドライブ・マイ・カー」でも徹底したということです。丁寧に細やかに作っているのですね。編集もそのつながりの自然さをすごく意識していてカット変わりが見えなくなるくらいまで、何度もつなぎ直す、まるで濾過していくような作業です。基礎的なことですが、編集点に関しては徹底して手を抜かない。それが濱口監督の編集美学だということです。

　私の感想ではなく、監督の言葉ばかり書いてしまいました。179分　かなりの睡眠不足で行きましたが一秒たりとも眠気はきませんでした。

　原作も読んでみるつもりです。

　💓家福音（妻）役の霧島れいかさん、いろいろ活躍されている方ようですが初めてお名前を知りました。49歳と書いてありましたが透明感があって美しいことこのうえなし。しかし憑依したように物語を話し出す場面の目はまるで老婆のような目をしていました。
　カセットの声も時々感情を入れた箇所があったような気がしました。

💙ドライバーの渡利みさき役の三浦透子さん、もうみさきにしかおもえません。あの目があの日以来、ちらちらして困ります。驚いたのは役が決まってから自動車学校に通ったそうです。三浦さんは歌手としても活躍しています。

『ドライブ・マイ・カー』三浦透子インタビュー「運転に人柄が集約される」

【8D】三浦透子 - グランドエスケープ (Full)

三浦透子 / 通過点 [Official Audio Movie]

三浦透子 - 愛にできることはまだあるかい

　💚劇中劇の「ワーニャの伯父さん」で手話で語る韓国人女優のイ・コナ役の
パク・ユリムさんのシーンが忘れられません。

悲しみのワーニャ伯父さんと、この世ではなく死後に希望を持って日々を耐えて生きようとするソーニャの最後のシーン。

●ソーニャの台詞より●

でも、仕方がないわ、生きていかなければ！（間）ね、
ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。長いはてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。運命がわたしたちにくだす試みを、辛抱づよく、じっとこらえて行きましょうね。今のうちも、やがて年をとってからも、片時も休まずに、人のために働きましょうね。そして、やがてそのときが来たら、素直に死んでいきましょうね。あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなに辛い一生を送って来たか、それを残らず申し上げましょうね。すると神様は、まあ気の毒に、と思ってくださる。その時こそ伯父さん、ねえ伯父さん、あなたにも私にも、明るいすばらしい、なんとも言えない生活がひらけて、まあ嬉しい！と思わず声をあげるのよ。そして現在の不仕合せな暮しを、なつかしく、ほほえましく振返って、私たち――ほっと息がつけるんだわ。わたし、ほんとにそう思うの、伯父さん。心底から、燃えるように、焼けつくように、私そう思うの……。ほっと息がつけるんだわ。

ほっと息がつけるんだわ！その時、私たちの耳には、神様の御使たちの声がひびいて、空一面きらきらしたダイヤモンドでいっぱいになる。そして、私たちの見ている前で、この世の中の悪いものがみんな、私たちの悩みも、苦しみも、残らずみんな――世界中に満ちひろがる神様の大きなお慈悲の中に、呑みこまれてしまうの。そこでやっと、私たちの生活は、まるでお母さまがやさしく撫でてくださるような、静かなうっとりするような、ほんとに楽しいものになるのだわ。私そう思うの、どうしてもそう思うの……。
お気の毒なワーニャ伯父さん、いけないわ、泣いていらっしゃるのね。あなたは一生涯、嬉しいことも楽しいことも、ついぞ知らずにいらしたのねえ。でも、ワーニャ伯父さん、もう暫くの辛抱よ。……やがて、息がつけるんだわ。……ほっと息がつけるんだわ！

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 👆　このシーンに感動しました。手話で演じるソーニャでした。声がなくても伝わります！

　3時間の上演時間でしたが長いとは思いませんでした。
睡眠不足で行きましたが眠気は一切ありませんでした。
最後まで見てくださりありがとうございました。感謝です。