「笑う能力」~茨木のり子はユーモリスト
このところ詩人茨木のり子さんのことで頭がいっぱい。
後藤正治著 📚清冽 詩人茨木のり子「倚りかからず」に生きた女流詩人の生涯~を読んだからかも。
どうしても彼女のイメージは真面目で高潔、優しいはもちろんだがとてもくだけたところがあるユーモリストなのだ。
「 笑 う 能 力 」
「先生 お元気ですか 我が家の姉もそろそろ
色づいてまいりました」
他家の姉が色づいたとて知ったことか
手紙を受けとった教授は
柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか
「次の会にはぜひお越し下さい
枯木も山の賑わいですから」
おっとっと それは老人の謙遜語で
若者が年上のひとを誘う言葉ではない
着飾った婦人たちの集うレストランの一角
ウェーターがうやうやしくデザートの説明
「洋梨のババロワでございます」
「なに 洋梨のババア?」
若い娘がだるそうに喋っていた
あたしねぇ ポエムをひとつ作って
彼に贈ったの 虫っていう題
「あたし 蚤かダニになりたいの
そうすれば二十四時間あなたにくっついていられる」
はちゃめちゃな幅の広さよ ポエムとは
言葉の脱臼 骨折 捻挫のさま
いとをかしくて
深夜 ひとり声たてて笑えば
われながら鬼気迫るものあり
ひやりともするのだが そんな時
もう一人の私が耳もとで囁く
「よろしい
お前にはまだ笑う能力が残っている
乏しい能力のひとつとして
いまわのきわまで保つように」
はィ 出来ますれば
山笑う
という日本語もいい
春の微笑を通りすぎ
山よ 新緑どよもして
大いに笑え!
気がつけば いつのまにか
我が膝までが笑うようになっていた 「倚りかからず」(筑摩書房、1999)より
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まるでお笑いのコントみたいな詩。
「柿」と「姉」を間違えるのもおかしい。
🍐でなくて用無し、ババロアでなくてばばぁ?
そして膝が笑う。他人事ではない。
のり子さんは面白くて楽しい!
「ユーモアとは にも拘わらず笑うこと」
それは妹の最期の時に決めたこと。
「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せになれるのだ」
悔しかったり怒ったりしてはよろしくない。
笑っちゃおう。
おまけ ある方のお話
教育実習生(悪くない私立大学生、現在は教諭として、立派に、頑張っている)からの、御礼の手紙に、「初夏を迎え学内の縁も鮮やかに・・・」と書かれていたことを、
思い出しました。
学生時代、ラジオで聴いた話題。鹿児島から上京した友人と、喫茶店に入り、何かを注文。友人は「おいも・・・。」と言ったが、ウエイトレス曰く「お芋はございません。」
読んでいただきありがとうございました。
こんな世の中ですが笑い忘れないように頑張りましょう。